映画『教育と愛国』 多くの人に見てほしい【弁護士 中西一裕】

 所員の紹介で映画『教育と愛国』(斉藤尚代監督)を遅ればせながら見たが、素晴らしいドキュメンタリーである。
 監督である斉藤尚代さんはMBS(大阪毎日放送)のディレクターであり、自らがネットバッシングの当事者となった経緯について取材した『何が記者を殺すのか』(集英社新書)の著者でもある。この映画も同名の著書(岩波書店)に基づいているようだ。

 この映画が素晴らしい理由は、取材対象への大胆な切り込みと当事者のインタビューが優れているからである。まさに現場主義に徹している。
 教科書問題については報道や書籍でよく知っているつもりだったが、このドキュメンタリーでは、慰安婦問題の記述で歴史教科書が集中攻撃されて倒産に追い込まれた日本書籍の担当者やその執筆者、ジェンダー問題の科研費研究に慰安婦問題を入れたことで杉田水脈議員らから攻撃された大学教授が登場しており、その攻撃のすさまじさと悪質さを生々しく感じる。
 他方、この映画では、攻撃対象となった被害者やその関係者だけでなく、攻撃した側の政治家や学者らへも直接インタビューしており、それが映像化されている(インタビュアーは監督自身であろう)。
 中でも極めつけは、育鵬社教科書の執筆者である東大名誉教授の伊藤隆氏(日本近現代史)で、反日教育に反対と繰り返しその政治的意図を強調し、安倍政権で憲法改正ができなかったのが残念とまでいう。「歴史から学ぶことなんてない」という放言には驚いた。
 他方、あの森友学園の籠池氏にもインタビューしているが、こちらは日本会議の指示で「偏向教科書」採択に抗議するはがきを多数の学校に送ったが問題だったと、率直に認めている。

 告発型ドキュメンタリーだけに見ていて気分がよいものではないし、教育への国家の介入(それこそ思想的偏向教育である)がこれほどまでかと背筋が寒くなるが、だからこそ是非多くの人に見てもらいたい。

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    2024年07月26日