『俺の上には空がある広い空が』【事務局 鈴木】

 『俺の上には空がある広い空が』桜井昌司著(マガジンハウス)


 今月(4月15日)発売の、この本を書いた桜井さんとは20数年来の友人です。

 お年はだいぶ上ですが、初めてお会いした時から目がきらきらと輝いている青年のようでした。

 それは彼が二十歳の時に逮捕され、29年間無実の罪で獄中にいたからでした。

 

 布川事件と呼ばれる茨城県利根町布川で1967年に起こった殺人事件の容疑者とされ、知り合いの杉山卓男さんと逮捕、1978年に無期懲役が確定し、29年間を獄中で過ごしました。

 初めて会ったのは仮釈放された1996年。当事務所に支援者と共に2人そろって挨拶に来られました。この事件は冤罪(えんざい)事件だとして日弁連も支援をしていました。今は事務所を退所されている榎本弁護士がこの事件の弁護人として名を連ねていました。また当事務所創設者の真部弁護士が当時日弁連の人権擁護委員長でした。

 その後、冤罪事件を支援している日本国民救援会の集まりなどで、たびたび顔を合わせ、当事務所の弁護士が所属している自由法曹団の集まりなどで会うと、一緒に懇親していました。

真っすぐな視線でどんなことにも興味をもっていて、私が支援している名張事件のことも、よく勉強されているので知識豊富で、冤罪事件のことについて仲間たちとよく熱く語りあっていました。

 獄中にいる時から、再審(裁判のやり直し)を求めて闘っていました。ついに2005年水戸地裁土浦支部で再審開始決定が出て、私もその場で一緒に喜び合い、2011年に無罪判決が出ました。真実を勝ち取るまでに43年7カ月に及ぶ時間がかかりました。

 桜井さんは詩を書かれます。とても胸を打つものです。苦しんだものにしかわからない気持ちではありますが、読んでいると涙が出てきます。獄中にいる間に亡くなったご両親への想いが伝わってきて涙なしには読めません。

 そして桜井さんは歌を歌います。とても上手です。歌詞に対する感情移入が半端ありません。カラオケに行きとてもビックリしました。その後CDも出され、コンサートを何度も開いています。

 現在は、違法な捜査で嘘の自白をさせ、目撃証言を捻じ曲げ偽証をした警察と、無実である証拠を隠し続けていた検察を相手に、国家賠償請求訴訟を起こし、判決が今年の6月に出ることとなっています。

 テレビや新聞などで桜井さんを見ると、本当に誠実で曲がったことは許さない真っすぐな人だとしみじみ感じます。

 自分が支援をしていると思っていましたが、そうではなく生き方を教えてもらっていたのです。

 嘘はつかない、嘘は許せない、許さない。もらった優しさは、また人に返す。実直に生きる。

 ぜひご一読ください。