建設アスベスト訴訟 東京地裁に続き、福岡地裁でも国に勝訴 【弁護士 鹿島 裕輔】

2014年11月7日、福岡地裁において、2012年の横浜地裁判決、東京地裁判決に続く、建設アスベスト訴訟についての三件目の地裁判決が出ました。

福岡地裁は、東京地裁判決に続いてアスベスト被害についての国の責任を認めました。

1 本件訴訟の概要

本件訴訟は、建設現場で働く中で、建材から生じたアスベスト粉じんにさらされ、石綿肺、肺ガン、中皮腫などの深刻な病を患った建設作業従事者やその遺族が、石綿含有建材を製造販売した建材メーカーと規制を怠った国に対して損害賠償を求めた訴訟です。

2 本判決の意義

本判決は、労働大臣は、遅くとも1975(昭和50)年10月1日の時点で、防じんマスクの着用や適切な表示を義務付けるといった規制権限を行使するべきであって、それを怠ったことは違法であると認定しました。

本判決は、国の規制権限不行使が違法となる時期を1975(昭和50)年とした点で、1981(昭和56)年とした東京地裁判決の内容を前進させています。

3 本判決の問題点

⑴ 一人親方に対する国の責任を否定したこと

本判決は、東京地裁判決に続き、一人親方をはじめとする「労基法適用労働者以外の建設作業従事者」について、賠償の対象に含まれないとしました。これは、国が規制権限を行使していれば一人親方らの被害も防ぐことができたという実態を全く見ていない不当なものです。

⑵ 建材メーカーらの責任を否定したこと

本判決は、東京地裁判決に続き、被告建材メーカーらの責任を否定しました。さらに、本判決は、被告建材メーカーらに対する共同不法行為責任を認めるためには、被災者ごとに、共同不法行為者たる加害企業範囲を特定する必要があり、その範囲外の者によって被害がもたらされたものではないことの証明を要求しています。

しかし、本件の被災者は、長年にわたり多数の建設現場で就労したために、建材メーカーらが警告表示を怠ったことと相まって、被害の原因となった建材やその製造企業を特定することは不可能なのです。本判決は、このような実態から目を背け、被害者に不可能な立証を強いる者であり、極めて不当です。

⑶ 国の責任範囲を軽減したこと

本判決は、東京地裁判決に続き、国の責任範囲を3分の1と認定するとともに、曝露期間や喫煙歴による減額を認めました。この点、泉南アスベスト最高裁判決では国の責任範囲を2分の1と認め、喫煙歴等による減額を認めなかったことからすると、本判決は国の責任を軽減したものです。

4 本判決は泉南アスベスト最高裁判決に続いて、アスベスト被害についての国の責任を認めた判決となり、アスベスト被害についての国の責任は固められたといえます。

しかし、それでも国に対する関係で救済されなかった被害者がいることや建材メーカーらに対する責任を認めさせることができなかったなどの問題が残る判決であります。労働者と同様に就労して石綿関連疾患を患った一人親方が救済されるべきであること、危険な石綿含有建材を流通させて被害を発生させ、多くの利益を得た被告建材メーカーらが責任を負うべきことは明らかです。

我々は、今後も国と建材メーカーらに対する責任追及を続け、アスベスト被害者の全面救済とアスベスト被害根絶を果たすために尽力する次第であります。

以上