いのちのボランティア 【事務局 鈴木 清子】

 競泳で活躍している池江璃花子さんが白血病を公表した。

 いま日本骨髄バンクにドナー登録の手続などの問い合わせが相次いでいるという。

 白血病は血液のがんともいわれる。治療薬の投与が行われることが多いが、治療が難しい場合などは骨髄移植が選択肢となる。移植には白血球のHLA型が一致するドナーを探すこととなる。

 

 日本骨髄バンクは1991年に設立された。

 私は1995年に骨髄バンクのドナーとして骨髄液を提供した経験がある。

 骨髄バンクのことをテレビで見て知り登録をした。1年後に2次検査の通知がきたが3次検査の連絡が入ったのはさらに1年くらい後のことであった。

 その後、コーディネーターから連絡が入り、意思確認及び家族の同意の確認があり、窓口となった大きな病院の血液内科の医師から詳しい骨髄移植の説明を受け検査をうけた。

 最終同意書を交わす際には第三者である弁護士も同席をした。この最終同意書に署名後は、骨髄提供の意思を撤回することは出来ない。患者さんはこの時点から造血機能を破壊していき、新しい骨髄液が入る準備をしていくからである。

 広報活動として、役所や企業等の研修で使用する「あなたを待っている人がいる―いのちのボランティア」というビデオを製作するのでご協力をとのことで撮影も行われた。入院前の健康診断と自己血輸血用の採血の日から、入院し、腸骨(骨盤の骨)からの骨髄液採取、4泊5日の入院中の様子が撮られている。

 採取当日は麻酔が覚めた時は気持ち悪さがあった。針を刺した腰の痛みは退院後一週間もたたないうちに消えていき、日常生活に戻った。

 事務所には経緯を説明し、ボランティアのドナー休暇ということで一週間休みをもらっての提供であった。

 そのビデオを見た知人達から、弁護士会や区役所で見たと連絡が入り、多くの人が見ていることを知り、少しは役に立ったのかなと思った。

 

 一年ほど前、事務所の弁護士宛に入ってきたファックスをみて驚いた。

 病院名と日時が記載されており、骨髄採取のための最終同意に、その日立ちあえるかどうかのファックスであった。

 東京弁護士会では、骨髄移植のための骨髄採取の最終同意面談に立会人となる弁護士を派遣する事業を行っており、同弁護士会での研修を受け、昨年立会弁護士としての登録をしたとのことである。

 当事務所、新進気鋭の鹿島裕輔弁護士である。

 骨髄バンクに関わる活動は、ボランティアである。鹿島弁護士は建設アスベスト訴訟や原発被害者弁護団の一員として活躍している。その忙しい中でこの登録をしていたことが、同志を得たような気持ちになりとても嬉しかった。

 

 私は最終同意面談の際、仕事柄、薬害問題や医療事故の訴訟も扱うため、不安もあった。特に全身麻酔などしたことがないことが怖かった。当初、100%安全とはいえないという母親の気持ちを説き伏せてしまったことも思い出され、気持ちがゆれていた。そんなとき、医師と共に、同席してくれた弁護士さんが落ちついていて明るくしっかりと説明をしてくれたことで不安が薄まっていったことを思い出す。

 

 池江さんも、私や鹿島弁護士も、私が骨髄液を提供した当時16歳だった患者さんも、家族や両親、職場や学校の先輩など多くの人たちに支えられている。

 そんな人と人とのつながりの中で、みんな生きている。