少年法年齢引き下げ、反対! 【弁護士 仲里 歌織】

1 自民党政務調査会による少年法年齢引き下げの提言

 2015年9月17日、自民党政務調査会は、「成年年齢に関する提言」をまとめ、同24日に法務大臣に提出しました。

 同提言の冒頭では「国民投票の投票権を有する者の年齢及び選挙権を有する者の年齢が満18歳以上とされたことを踏まえ」提言するとされています。

 そして、「少年法について」という小項目の中で「国法上の統一性や分かりやすさといった観点から、少年法の適用対象年齢についても、満18歳未満に引き下げるのが適当である」と述べています。

 

2 提言の議論の乱暴さ

 上記提言では「国法上の統一性」「分かりやすさ」を理由として年齢引き下げの結論を出しています。しかし、そもそも、個々の法律の適用対象を議論する際には、まずもって、その法律の趣旨目的に照らした議論が必要であり、それを全く議論せずに「分かりやすさ」を基準とするのは、とても無責任で乱暴な議論の仕方です。

 少年法は第1条で、この法律の目的として「少年の健全な育成を期し」と掲げています。少年の健全な育成、すなわち、少年の成長発達権を保障する(少年が成長し発達することを支える)ことを法律の目的として掲げているのです。

 そうであれば、少年法の適用年齢の引き下げについては、本来、年齢を引き下げることが少年の成長発達にとってどのような効果があり、どのような弊害があるのかを真正面から議論しなければいけません。

 

3 18歳への年齢引き下げは、深刻な弊害をもたらします

(1) 少年事件と刑事事件とでは、大きく仕組みが異なります。中でも少年事件の大きな特色は、①審判自体が立ち直りのプロセスになっていること、②行動科学の専門的知見に基づいた調査により処遇が決定されること、にあります。

(2) ①審判自体が立ち直りのプロセス

 少年の多くは、虐待の中で育ったりして自分の話をしっかり聞いてもらった経験が乏しい等の背景から、考えていることを表現すること自体がとても大きなハードルです。

 他方で、自分が行ったことを振り返り、それについて自分の気持ちや考えを伝えることは、少年の立ち直りにとって重要なことでもあります。そのため、少年の発言を保障することで少年の立ち直りをはかるために、少年法では、審判を非公開とし、「審判は、懇切を旨として、和やかに行う」(少年法第22条)としています。

 審判で、自分の思っていることを伝えられたから頑張ると裁判官の決めた処遇を受け入れて成長していく少年、審判で裁判官と約束したから頑張ると様々な誘惑にも打ち勝っている少年を見ていると、少年審判自体が立ち直りのプロセスになっているのだと感じます。

 公開の法廷で行われ、検察官も立ち会う刑事裁判なら、少年が自分自身のことについて素直に話すことは期待できず、立ち直りの大事なきっかけの1つを失ってしまいます。

(3) ②行動科学の専門的知見に基づいた調査少年は未だ成長発達の途上にあるからこそ、少年が非行に至る原因を正しく把握し、それに対し適切な手当てができれば、立ち直りが充分に期待できます。

 そのため、少年事件では、家庭裁判所が調査をしなければならず(少年法第8条)、調査は「なるべく、少年、保護者又は関係人の行状、経歴、素質、環境等について、医学、心理学、教育学、社会学その他の専門的智識特に少年鑑別所の鑑別の結果を活用して、これを行うように努めなければならない」(少年法第9条)とされています。

 つまり、行動科学に基づき、少年が非行をするに至った原因を解明し、少年が立ち直るために適切に環境調整をし、処遇を決定していくことになります。

 付添人をしていると、この調査の中で、特に鑑別技官による専門的な調査の結果から本人はもとより家族も気づいていなかった少年の特性が見えてくることや、少年の立ち直りのために必要な環境調整が見えてくることが多く、調査結果を踏まえ環境調整の方向性を修正することもあります。

 刑事事件では、上記のような調査は予定されていませんので、原因解明が困難となってしまいます。そして、適切な原因・背景分析がなければ、立ち直りのための適切な支援も困難となり、ひいては少年の立ち直りも困難となってしまいます。

(4) 以上のように、少年法の適用年齢が18歳に引き下げられれば、18歳・19歳の少年は、少年審判により自らを振り返る機会を失い、また原因解明もされないまま罰だけが与えられることになってしまいます。その結果、立ち直りの機会が奪われ、少年の「健全な育成」という法の趣旨目的からかけ離れた結果になってしまいます。

 

4 18歳への年齢引き下げは大きな弊害をもたらします

 2014年に検察庁が新規に通常受理した少年被疑者数は9万5532人、そのうち18歳・19歳の少年は4万4575人ですので、約46.6%を占めています。

 少年法の適用年齢が18歳に引き下げられれば、約46.6%の少年が影響を受け、上記のように立ち直りが困難な状況におかれてしまいます。

 それは、少年の成長発達の観点からも大きな問題ですし、また、再非行ということになれば社会的な損失という観点からも失うものは大きいと思います。

 

5 「少年法の年齢引き下げ反対!」の意見を法務省に届けましょう

 法務省は、上記提言を受け「若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会」を開催し、少年法の適用年齢引き下げについて意見を募集しています(募集期間は、2015年12月31日まで)。

 ぜひ、多くの方に反対意見を①メールか②郵送にて提出頂きますようお願いします(匿名での意見提出も可能になっています)。

 ① 電子メール:jakunen@moj.go.jp
  *メールの場合、本文に意見をお願いします(添付ファイルによる提出は×)。

 ② 郵送:〒100-8977 東京都千代田区霞が関1-1-1

  法務省内 刑事局刑事法制管理官室

  「若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会 意見募集担当」宛

  詳しくは、下記をご参照ください(法務省の該当URLです)。

  http://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00121.html