福島原発事故集団提訴について 【弁護士 加藤 芳文】

 新聞テレビ等で報道されましたが原発事故から2年目の3月11日、約1650名の原告が国、東京電力を被告として原状回復や損害賠償を求め福島地裁、
同いわき支部、東京地裁、千葉地裁に一斉提訴しました。(今後も第2次、第3次訴訟と原告は増える見込みです。)
 私も福島地裁提訴に弁護団の一員として参加しましたので簡単にご紹介します。(当日は原告団200名が寒風の吹きすさぶ中裁判所に集まりました。)
福島地裁には福島県内の避難者、滞在者、山形や沖縄に避難している人たち800名が提訴しました。
要求は
①放射線量を除染により原発事故前に戻せ
②それが終わるまで事故の日から毎月5万円の慰謝料を支払え
というものです。
 彼らは今なぜ提訴に及んだのでしょうか。それは一向に政府、自治体による除染と環境回復が進まず、いつまでたっても避難者は職を失ったまま避難先の
仮設住宅や借り上げ住宅からふるさとに帰れないからです。また福島に踏みとどまっている人も汚染による健康不安の日々を送り、農家や漁業関係者は
いまだに風評被害に苦しんでいるからです。
 そこで原告団は、環境回復、健康対策、完全な賠償を求めるとともに2度とこのような事故が起きないよう全ての原発の廃炉とエネルギー政策の転換を求めています。
それにしてもどうして2年もたつのにこんなに対策が遅れているのでしょうか。
私たちはつまるところ、事故に対する国や東京電力の法的責任が曖昧なまま現在に至っているからだと考えています。
責任のないところにきちんとした対策がとられるはずもないのです。
 実は今回の事故の原因である巨大地震、津波が福島原発を襲う可能性があることは事前の津波勉強会や学者のレポートなどによりわかっていました。
予想されていたにもかかわらず国も東京電力も対策をサボり先送りしていたのです。
そこで原告、弁護団は、国には国家賠償法、東京電力には民法による不法行為責任があると考え立ち上がったわけです。
 ではなぜ国や東京電力はわかっていながら対策を先送りしたのでしょうか。
対策をとるとなると「原発は安全で我が国では過酷事故は起きません。」とさんざん言ってきた安全神話と矛盾し住民から不安の声が上がるのを恐れたのです。
さらに対策には時間とコストがかかりその間原発を止める必要があります。そこで国、東京電力は反対運動を恐れ、コストを惜しみ対策に目をつむったのでした。
皮肉にもそこへ今回の巨大地震、津波が原発を襲い安全神話を完全に打ち砕いたのです。ですから国、東京電力の責任は明白です。
しかしそうはいっても相手は国と東京電力ですからいろいろ理屈を並べて抵抗してくるものと思われます。そこで勝利のためには多くの皆さんのご支援が欠かせません。
 長い闘いの幕開けですが原告団と弁護団がしっかり団結し頑張りますので応援のほど宜しくお願いします。