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アメリカ法廷ドラマから見える日米の法制度の違い~第1回懲罰的損害賠償制度~ 【弁護士 山添 健之】

 

 アメリカでは、「法廷ドラマ」が、テレビドラマのひとつのジャンルとして確立していて、日本でも多くのアメリカ法廷ドラマが放映されています。古くは「弁護士ペリー・メイスン」に始まり、「L.A.ロー 七人の弁護士」、「ザ・プラクティス ボストン弁護士ファイル」、少し毛色は違いますが「アリー・my love」、最近では「The Good Wife」などが人気のようです。

 日本にも弁護士(あるいは検察官)が主役のドラマはいくつかありますが、アメリカの法廷ドラマは、日本のものに比べて、法廷での場面が格段に長く、かつスリリングですし、またリアリティがあり、アメリカの社会問題や裁判にまつわる問題をよく描写していると評されています。そういった理由で、弁護士の間でも、アメリカの法廷ドラマのファンは多いと感じています。

 

 アメリカの法廷ドラマを見ていると、日本と米国の法律の違いをあらためて感じることがありますし、一般の方が見ていても「アメリカの法律って日本とこんなに違うんだ」と感じることがあると思います。今回はそのような日米の法制度の違いのひとつとして、「懲罰的損害賠償制度」について簡単にお話したいと思います。

 「損害賠償」というのは、人が故意または過失により、あるいは契約に反する行為を行ったことによって、他者に損害を与えてしまった場合に、その損害を賠償する制度のことです。交通事故や医療過誤、あるいは犯罪行為によって人を死亡させたり、けがをさせたり、財産を侵害した場合に「賠償金」を支払わなければならないのは、法律が「損害賠償」の制度を定めているからです。

 日本において「損害賠償」は、「実際に生じた損害」の金額に限られています。つまり、不法行為によって失われたものを回復させる限度での損害賠償しか認められていません。ですから、例え人が亡くなるような事件・事故であっても、賠償額が2億円を越えるようなことはまれです。

 ところがアメリカでは、被害者がけがを負った程度でも、賠償額が億単位になることがあります。これは、アメリカ(の州法)では、損害賠償請求訴訟において、「実際に生じた損害」の賠償(compensatory damages)に限られず、「懲罰的損害賠償(punitive damages)」が認められているからです。

 懲罰的損害賠償とは、加害者が被害者に意図的に損害を与えた場合など、加害者の行為が強く非難される場合に、加害行為の再発を抑止する目的で、「実際に生じた損害」を大きく上回る賠償責任を罰則的に課することを認める制度です。

 

 二十年近く前になりますが、「アメリカでは某ハンバーガーチェーンのコーヒーをこぼしたお客さんが会社を訴えて何億円も賠償をもらった」というニュースが話題になったことがありました。この事件は最終的には数千万円の支払いによる和解で解決していますが、一審の陪審員は、実際に生じた損害の賠償に加えて、270万ドルの「懲罰的損害賠償」を命じたのです。(なお、この「某ハンバーガーチェーン」の事件は、アメリカの訴訟社会の悪しき例、すなわち「大したけがでもないし自分のミスでコーヒーをこぼしたのに大金を手にした」という文脈で語られることがありますが、この事件の被害者のおばあちゃんと家族を取材したアメリカのドキュメンタリー映画をみると、かなりひどい火傷を負っていること、ハンバーガーチェーンが過去に「コーヒーが熱すぎる」ことについて多数の苦情を受けていたのに、これを放置していたことなどがわかります。)

 アメリカの法廷ドラマでも、被害者が製薬企業・飲料メーカー・銀行などを相手にした訴訟で、陪審員が数十億円の支払いを求める判断を下すことがあります。これらも「懲罰的損害賠償」がテーマとなっている訴訟で、ドラマの主役である被害者側の弁護士が、「懲罰的損害賠償」を認めさせるために躍起になる姿が描かれています。「懲罰的損害賠償」の額を算定するにあたっては、加害者側の経済規模や、加害行為によって生じた利益(先ほどの例では「コーヒーの売上げ」)が大きく影響することから、多額の賠償を課せられるのは、多くが大企業です。

 

 しかし、そのような多額の賠償金を課せられ続けるアメリカの大企業が黙っているわけはありません。当然、「懲罰的損害賠償が企業活動の自由を損なっている」という声があがり、「不法行為改革」(tort reform)とよばれる、大規模な運動が繰り広げられました。(なお、tort reformの主張の中には、懲罰的損害賠償の制限以外にも、例えば「訴訟費用の敗訴者負担」といった、日本でも導入が検討され、多くの弁護士会が反対している制度の主張も含まれています。)

 そのような運動の結果、アメリカのいくつかの州では懲罰的損害賠償の額に上限を設ける等の州法が成立するにいたっています。

 

 ドラマThe good wifeでは、銀行が担保に取った住宅のプールを放置し、腐敗した水で繁殖した蚊により病気にかかった少女が、銀行に懲罰的損害賠償を求めた事件で、数十億円の和解金を獲得し、主人公が属するシカゴの大手法律事務所が30パーセントを超える報酬を得て、事務所の「破産の危機」から脱する、という場面が描かれています。私からすれば、「数十億円の和解金」もびっくりならば、「30%の報酬」というのも驚きですが、日本では同様の事件でこのような和解金が支払われることはあり得ないでしょう。

弁護士活動コラム   2017年03月31日   admin