2015(平成27)年10月にいわゆる「マイナンバー法」が施行され、2016年(平成28)年1月より本格的にマイナンバー制度の運用が開始されました。みなさんの下にも「通知カード」と呼ばれる、みなさんのマイナンバーが記載されたカードが届いているかと思います。
今後、みなさんのマイナンバーを利用するために、市区町村役場や税務署、勤務先の会社などからマイナンバーの提出を求められることになります。すでに勤務先の会社からマイナンバーの提出を求められている方もいらっしゃるかと思います。また、2017(平成29)年3月の税務申告に向けて、税務署へ提出する確定申告書にマイナンバーの記載が求められることになります。このように、勤務先の会社からマイナンバーの提出を求められたときや確定申告書を提出する際には、マイナンバーを提出しなければいけないのでしょうか?マイナンバーの提出を拒否すると刑罰を科せられたり、行政サービスを受けられないなどの不利益を受けることになるのでしょうか。
〇マイナンバーの提示を拒否しても刑罰を科せられることはありません。
マイナンバー法には、いくつか刑罰規定が設けられていますが、刑罰が科せられるのは、詐欺行為によってマイナンバーを取得したり、取得したマイナンバー等の個人情報を漏えいした場合などです。簡単に言ってしまうと、マイナンバー等の個人情報の不正取得と漏えい行為に対して刑罰が科せられます。よって、マイナンバーの提出を拒否したとしても刑罰を科せられることはありません。実際、国税庁ホームページの【番号制度概要に関するFAQ】のQ‐2-3-3には「税務署等が受理した申告書や法定調書等の税務関係書類にマイナンバー(個人番号)・法人番号の記載がない場合や誤りがある場合の罰則規定は、税法上設けられておりません」と記載されています。
なお、会社などの事業者が従業員のマイナンバーを収集しなかったとしても刑罰を科せられることはありません。
〇マイナンバーの提示を拒否しても不利益を課せられることはありません。
マイナンバーの提示を拒否した場合、行政サービスを受けられなくなったり、確定申告書類を受け取ってもらえないなどの不利益を受けることはありません。国税庁ホームページの【番号制度概要に関するFAQ】のQ-2-3-2には「申告書等にマイナンバー(個人番号)・法人番号の記載がない場合でも受理することとしています」と記載されています。
また、2015(平成27)年11月9日付の全国商工新聞では全国中小業者団体連絡会が同年10月27日、28日に行った省庁交渉における各省庁の回答について、以下のとおり記載しています。
【内閣府】
「扶養控除等申告書」「源泉徴収票」などの法定資料や雇用保険、健康保険、厚生年金保険など書類に番号が記載されていなくても書類は受け取る。記載されていないことで従業員、事業者にも不利益はない。従業員から番号の提出を拒否されたときは、その経過を記録する。しかし、記録がないことによる罰則はない。
【国税庁】
確定申告書などに番号未記載でも受理し、罰則・不利益はない。事業者が従業員などの番号を扱わないことに対して国税上の罰則や不利益はない。窓口で番号通知・本人確認ができなくても申告書は受理する。
【厚生労働省】
労働保険に関して共通番号の提示が拒否され、雇用保険取得の届出で番号の記載がない場合でも、事務組合の過度な負担が生じないよう、ハローワークは届出を従来通り受理する。罰則や不利益はない。労働保険事務組合が番号を扱わないことによる罰則や不利益な扱いはない。
このように、マイナンバー制度の導入を進めてきた国の行政機関である各省庁が自らマイナンバーの提出を拒否しても不利益ははいと回答しています。
すなわち、マイナンバーの提出に関しては、各法律で各提出書類への記載が義務付けられていますが、提出を拒否された場合の強制力まではありません。つまり、マイナンバーの提出を拒否された場合には、提出書類の受理を拒んだり、行政サービスの提供を拒否するなどの不利益な扱いをすることはできないのです。
以上のように、マイナンバーの提出を拒否しても、刑罰やその他の不利益を課せられないのですから、マイナンバーの漏えいの危険や悪用される危険など、マイナンバー制度に対する不信・不安がある場合には、マイナンバーを提出しないという意思表示をするべきでしょう。
なお、会社などマイナンバーの収集を求める側は、提出を拒否された場合、そのことを記録に残せばよいことになっているので、例えば勤務先の会社への提出を拒む場合は、以下のような書面を作って提出するとよいでしょう。