高齢者 任意後見制度と介護サービス 【弁護士 清水 千晶】

 日本は世界一の長寿国ですが、一方で、65歳以上の相当程度が認知症予備軍だとも言われています。そこで、まさかの時に備えて任意後見契約を締結しておくことは大事なことといえます。

 

 この任意後見制度は、成年後見制度の一つですが、判断能力が低下する前に、自分の判断能力が低下した時に備えて、不動産や預金の管理等をしたり、介護サービスを受ける契約を締結してくれたりする人(後見人)を決めておこうというものです。実際に後見を受ける時点では、任意後見人を監督する任意後見監督人を家庭裁判所が選任しますので、被後見人にとっては安心ですし、後見人となる人にとっても下手に他の親族に疑われたりしないで被後見人の為に財産管理をしてあげられる制度といえます。

 

 既に、お身内の後見人となられている方もいらっしゃると思いますが、後見人は、被後見人の為に、介護サービスを受ける契約を締結しますので、介護保険に掛かる費用も気になるところでしょう。この介護保険負担額が本年8月から見直されました。今までは全て1割の利用料の支払で介護サービスを受けられましたが、単身者であれば年間280万円以上の年金があれば2割負担となりました。また、今までは住民税非課税世帯では、特別養護老人ホーム入所時の食費、居住費等を補填する「補足給付」を受給できましたが、これからは1000万円を超える預貯金がある場合は補足給付はうけられなくなりました。

 

 介護保険財政が逼迫しているとはいえ一部の高齢者にとっては厳しい改正です。