首都圏建設アスベスト訴訟・東京高裁(東京地裁判決控訴審)の不当結審との闘い 【弁護士 鹿島 裕輔】

1 東京高裁(東京地裁判決控訴審)の裁判長が「次回、結審」の方向を表明

 

  平成27年7月14日、東京高裁(東京地裁判決控訴審)の第6回期日が行われました。同期日において、裁判長は「次回で結審する方向だ」と表明しました。

  原告側は、被告建材メーカーに対する請求に関して、東京高裁で新たな不法行為論の主張を行っており、各職種代表者の原告本人尋問を申請しています。しかし、裁判長は、原告らの主張については、これまで提出された証拠や一審で行われた原告本人尋問の結果から判断することは可能であるとし、原告本人尋問は不要であると言明しました。

  また、原告らの被害の実態について、裁判長は、「一審で聞いているから原告本人尋問をする必要はない」と言いきりました。裁判所は、原告の被害の実態を聞かないで審理を終了するという態度を示したことになります。

 

  弁護団は、裁判長が原告らの被害の実態について、「一審で聞いているから原告本人尋問は不要である」と発言したことに対して、「何人原告がいると思っているのか、300人以上はいる。その中から代表する原告の意見(被害の実態)を聞いてくれと言っている」「それを踏まえて、まっとうな判決を書いてください。二度と被害を起こさないで下さい。そういう趣旨で(原告尋問を)申請している、到底、納得できない」と主張しました。

  結審に固執する裁判官に対して、今後の訴訟進行についての話し合いをする場としての進行協議を入れること(9月8日、東京高裁(横浜地裁判決控訴審)の裁判期日終了後)を主張しましたが、それについても、新たに原告らが8月末日までに提出する「意見書」の内容を見て判断するとし、進行協議の開催についての回答を留保しました。

 

2 原告本人尋問を行わない不当結審に反撃し、被害立証を求めます

 

  法廷においては、8月末までに「不当結審をゆるさない意見書」を提出し、「未だ審理は尽くされていない、原告本人尋問を行わずにメーカー責任の判断はできない、被害の実態を聞かずに結審することは不当である」などという主張を積み上げて、まずは進行協議の開催、そして、審理継続による被害立証を求めます。

  また、法定外の闘いも重大局面に対応し、東京高裁前での宣伝行動や署名活動、裁判官への手紙など最大限の手立てを尽くし闘い抜きます。

 

3 私たちの反撃は、東京高裁に留まらず、世論と政治へと働きかけるものです

 

  不当な審議進行を進める裁判長に、弁護団長は、「被害立証については調書があるからいいという、そんな訴訟指揮は、一度も(経験が)ない」、「(原告が)自ら法廷に立って、しっかり被害を訴えて、それを(裁判所が)受けとめて、初めて判決を考えるのではないでしょうか」と結審の意向を撤回するよう求めました。裁判長をアスベスト被害の実態に向き合わせるために行うこの闘いが、いかに大きな反撃として展開されるかは、首都圏建設アスベスト訴訟だけでなく、全国のアスベスト訴訟にも影響するものです。

 

  事態は深刻で緊急に様々な手立てを打っていくことになりますが、この私たちの反撃の強さが、法廷内に留まらず、建設アスベスト被害を早期に政治解決せよという声として、世論と政治に届くものであることを確信し、団結して闘っていく次第であります。