弁護士 伊藤 真樹子
首都圏建設アスペスト訴訟は
石綿含有建材を取り扱う過程で大量の石綿粉じんに曝露した結果、
石綿肺・肺ガン・中皮腫等の重篤な石綿関連疾患に罹患した患者388名が統一原告団を結成し、
被告である国と石綿含有建材製造メーカー42社に対して
損害賠償を求め、東京地裁と横浜地裁に提訴した訴訟です。
訴訟は、1次訴訟が提起されてから3年8か月を経過し、その間、原告側は、事実論、法律論の主張、学者や医師などの専門家証人、被災者やその家族本人の尋問などによる立証を積み上げてきました。
現在、東京地裁、横浜地裁いずれの訴訟も大詰めの状況に達しています。
横浜地裁は、今年の1月13日に結審し、判決期日が5月25日と指定されました。東京地裁は、横浜地裁と比べ原告数が多いことと、昨年の4月に裁判所の構成が代わったため、横浜地裁より遅れますが、今年の4月25日には結審することが決まり、今年中には判決が出されることが予測されます。
このように、首都圏建設アスベスト訴訟が大詰めを迎えている段階で、昨年の8月25日に大阪泉南国賠訴訟において大阪高裁が、原告側全面敗訴の極めて不当な判決を出しました。
大阪高裁判決は、人の生命・健康より工業技術や産業社会の発展を優先させる考え方であり、これは、行政の基本的な考え方とも言えます。
首都圏建設アスベスト訴訟においても、国側は同様の主張をしています。
大阪高裁判決は、行政の考え方に無批判に追随し、筑豊じん肺訴訟最高裁判決等で積み上げられている司法の流れに逆行するものです。国の規制権限の行使(不行使)にあたって、工業技術や産業社会の発展を優先させ、労働者の生命・健康を無視することは決して許されません。
不当な大阪高裁判決は、筑豊じん肺訴訟最高裁判決等の判断枠組みに明確に反しており、とうてい他の裁判所が追随するような判決ではありません。首都圏建設アスペスト訴訟において、私たちはこのことに強く自信を持っています。
このような情勢のなかで、不当な大阪高裁判決を乗り越え、確実な勝利の判決を得るためには、原告団と弁護団が因く団結し、油断のない法廷闘争、アスペスト被害根絶の世論をこれまで以上に大きくしていくこと、建設アスペスト問題を政治問題化し、適切な政策を確立させることなどが重要と考えています。
来年のこの場で、皆様に勝利のご報告をさせていただくべく、どうぞ引き続きのご支援をお願いいたします。