東京東部法律事務所
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「百害あって一利なし」 スーパー堤防整備事業をとめよう!


2010/06/18 弁護士  中 村 悦 子

【スーパー堤防とは?】

 正式には「高規格堤防」という名称です。堤防の高さの30倍の区域の土地全体の高さを盛り上げる,つまりまち全体を土盛りして堤防化することで,「壁」であった従来の堤防よりも壊れにくい堤防となるとされています。

 このスーパー堤防は,全国6河川(利根川,江戸川,荒川,多摩川,淀川,大和川)の両岸に50〜60年をかけて幅200〜300mの広大な堤防を構築するという河川審議会の答申(昭和62年)に端を発し,現在,東京東部地域では主に江戸川の右岸,具体的には江戸川区北小岩地区と篠崎公園周辺地区で計画が進められています。

【どこが問題?】

(1) 治水対策として不適切!

 最善の治水対策は「堤防を越えさせない(越流させない)こと」ですが,現在の堤防をスーパー堤防化しても堤防高は変わらないのですから,基本的に無意味です。それに,要整備区間の全区域がスーパー堤防化されて初めて,破堤による被害を回避できるというのに(現状の堤防部分とスーパー堤防部分が混在していると,後者に水流が集中して却って危険です),全区域のスーパー堤防化には少なくとも400年はかかるとされているのです! しかも,既にスーパー堤防化された部分についても,法面が崩落する事故が発生した箇所もあり(荒川・北赤羽防災ステーション),「壊れない堤防」という前提自体が危ぶまれています。

 現在の堤防を補強する方法としては,こんな時代遅れのスーパー堤防よりも,もっと効果があり,かつ費用が抑えられる方法があるのです。

(2) 税金のむだ遣い!

 スーパー堤防事業の着手から15年経った時点(平成15年)での統計では,全体のわずか5.4%しか整備が進んでいないことが明らかになっています。それなのに,かかった事業費は累計で4965.4億円! いったい今後どれだけの期間と費用を費やさねばならないのかと考えただけでも,この計画の無謀さと非効率性がよくわかります。

(3) 住民の不利益が甚大!

 まち全体を土盛りするため,住民は二度の引っ越しを余儀なくされ,それに伴う経済的負担(移転や仮住まい確保の為の費用,住宅ローン等)はもとより,精神的負担(住み慣れた町を離れ,再度の人生設計を迫られる等)も極めて深刻なものになります。しかも,移転前のコミュニティーがそのまま残される保証はどこにもありません。…これ以上の「まちこわし」があるでしょうか。

【今はどんな状態?】

 一昨年中,篠崎地区については都市計画道路の変更決定及び緑地事業の事業認可が下りた段階から特に進展はありませんでした。しかし,北小岩1丁目東部地区(18班地区)は重点的な整備対象として位置づけられ,江戸川区は昨年の年明け早々から地質調査・測量を実施し,住民説明会や「まちづくり懇談会」を複数回実施しつつ戸別の切り崩しを図ってきました。そして,2009年7月に都市計画決定に向けた法定説明会が行われ,同年9月1日には都市計画決定案が縦覧に付された後,同年11月12日開催の都市計画審議会において施行区域の都市計画決定がなされました。区としては,引き続き本年度中を目処に事業計画決定を行う方向性のようです。

 これに対し住民の皆さんは,同年3月には住民監査請求を行って区の不動産取得の不当性を指摘し議会で意見陳述を行ったり,鋭い疑問点を連ねた公開質問状を複数提出し区としての具体的回答を求めたり,前記法定説明会でも的を射たねばり強い質問を繰り返す等,積極的な対応策をとってきました。同年7月には,国土交通省に対し江戸川スーパー堤防整備事業の中止を求める陳情書も提出しています。

 当事務所弁護士も,地域住民の皆さんの勉強会に出席し,住民の会の方々との打ち合わせを随時行う等の活動の他に,スーパー堤防についての独自の勉強会・検討会を事務所内部で何度も行い,適切な法的対応について議論を重ねてきました。

【大きな動きが!】

 そうした中,昨年8月30日の衆議院選挙で,『むだ遣いをなくします』とマニフェストに明示した民主党が歴史的勝利を勝ち取りました。その結果,八ッ場ダムの計画凍結が現実のものとなるなど,にわかに情勢が変化し始めたのです。

 「この好機を逃す手はない!『むだ遣い』は八ッ場ダムだけではない!」ということで,北小岩・18班・篠崎の3地域の連帯の下にすぐさま勉強会・準備会を行い,11月16日には,それまでに各地域で集約したスーパー堤防に反対し見直しを求める請願署名を2921筆提出すると共に,衆議院第一議員会館での院内集会及び記者会見を開催し,これを見事に成功させました。多数の超党派の議員(及び秘書)の参加を得たこの院内集会は,それまで地域の問題として捉えられがちであったスーパー堤防問題を「国家的なむだ遣い」の問題として広く認識させる契機となり,各種新聞や「サンデー毎日」等の複数のメディアにも驚きを持って取り上げられる結果となったのです。

 その後も,12月24日には超党派の国会議員からなる「公共事業チェックの会」の議員7人,代理参加を含めた秘書9人及び自民・公明両党を除く江戸川区議会議員全員の参加による大規模な現地視察が行われるなど,政治解決に向けた具体的な動きは続いており,大きなうねりへとつながる勢いは衰えていません。

【そしてこれから…】

 江戸川スーパー堤防整備事業の(現時点での)対象地域である北小岩・18班・篠崎各地区は,その置かれている状況はそれぞれ異なりますが,スーパー堤防に反対するという一点で手をつなぎ,今後も相互に連携しながら民主党政権下における政治解決を第一目標として運動を強めていく方針です。我々弁護団も,強引に進められようとしている江戸川区の法的手続きに対し法的手段を講じる必要性も視野に入れつつ,運動面でもできる限りの協力をして,またとない歴史的好機を逃さず,必ずやこの国家的な「むだ遣い」を止めさせるべく努力して参りたいと思います。

 該当区外あるいは地域外の皆さまにも,本格的な山場を迎えたこのスーパー堤防問題に引き続き関心をお寄せ頂き,これまで以上のご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。


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