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東京東部法律事務所の弁護士による活動報告

弁護士業務と税金 【弁護士 山添 健之】

 私たち弁護士がお客様のご依頼を受けて様々な業務を行うにあたって、税金が問題となることが多々あります。当事務所で一番多いのは、遺産分割などの相続事件を処理する際の相続税の問題です。相続税の申告が必要と考えられるお客様には、当事務所と協力関係にある税理士法人をご紹介し、税理士との打合せに同席するなどして、適切に申告・納税ができるようにサポートをさせて頂いております。

 相続にあたって相続税が発生することがあるのはどなたにもわかりやすいことですが、離婚にあたっても税金が発生することがあります。離婚の際に、婚姻生活中に形成した財産をわけることを「財産分与」といいます。「財産分与」として、例えば、夫が、妻に、時価1億円の土地・建物を譲ったとします。この時、場合によっては多額の税金を納めなければならないことがあります。それも、1億円の土地・建物をもらった妻ではなく、それをあげた夫が払わなければならないことがあるのです。これは「譲渡所得税」という税金で、典型的には、不動産などの財産を売ってお金にした時に、自分がその財産を手にしたときと比較して値上がりした分に、税金がかかるものです。

 では、なぜ、1億円の不動産を妻に譲った夫にこの「譲渡所得税」がかかるのか。夫は1億円の不動産を妻に譲ることで、1億円の債務(財産分与義務)を免れることとなり、これは1億円の不動産を売って現金にし(この場合は間違いなく譲渡所属税がかかります)、妻に現金1億円を渡したとの同じだから、と考えられています。なお、夫がもともと自分名義でもっていた現金を妻に財産分与として渡したのであれば、譲渡所得税はかかりません。

 さて、当事務所で比較的取扱の多い、借地の事件でも、税金が問題となることがあります。借地を譲渡したときに先ほど説明した「譲渡所得税」がかかる(値上がりしていた場合)のは当然ですが、固定資産税・都市計画税が問題となることもあります。土地の賃借人(地主)は、土地の固定資産税・都市計画税を負担する必要があり、地代の算定にも、土地の固定資産税・都市計画税が用いられることがあります。

 借地人が、借地上に家を建てて住んでいたところ、あるときからそこを自宅兼事務所として使いはじめ、1階に看板をだしたとします。地主としては、建物に変更がない以上、なにも言わずにいることが多いのではないでしょうか。しかし、建物の使用目的が変わることにより、建物ではなく、土地の固定資産税・都市計画税が大幅に上昇することがあります。これは、土地の固定資産税・都市計画税は、住宅用地として用いられている場合、大幅に軽減される制度があり、建物自体が変わらなくても、その「住宅」ではなくなることにより、この軽減が適用されなくなり、固定資産税・都市計画税が大幅に上昇することとなるのです。

 このように、弁護士業務と税金は密接に関連しており、私たちも、必要に応じて税理士と意見交換しながら、お客様が思わぬ負担を被ることのないよう、細心の注意を払っています。

弁護士活動コラム   2019年01月23日   admin

「相続法改正」パート1 【弁護士 大江 京子】

相続法が約40年ぶりに大改正されました 

 2018年(平成30年)7月6日、民法及び家事手続法の一部を改正する法律が成立しました(同年7月13日公布)。相続法については昭和55年以来の大きな改正となります。原則的な施行日は2019年7月1日(遺言書の方式緩和については2019年1月13日施行。配偶者居住権については、2020年4月1日施行)です。

 過去においては、1947年(昭和22年)に家族法の旧法の抜本改正がありました。これは、旧法の封建的「家」制度(戸主制度・家督相続・妻の無能力・妻の相続権の制限(直系卑属がいる場合に妻は相続権がないなど)が、憲法24条「家族生活における個人の尊厳と両性の平等」の原理に基づき一掃されました。

 また、1980年(昭和55年)にも、妻の法定相続分が3分の1から2分の1に引き上げられる重要な改正がありました。

 今回の改正(民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律)は、①高齢社会の一層の進展に合わせて、残された配偶者の保護を図る、②遺言の活用を促し相続に関する紛争防止する、③相続人間又は利害関係者の相続に関する公平を図るなどが狙いとされています。

 

改正の主な内容

1 配偶者保護の制度の新設

 配偶者短期居住権  

 配偶者居住権

 持ち戻し免除の推定

2 遺産分割に関する見直し

 預貯金債権の仮払い制度の新設

 遺産分割前に遺産の処分がなされた場合の措置規定

3 遺言制度の見直し

 自筆証書遺言の簡便化

 自筆証書遺言の保管制度の新設(遺言書保管法)

 遺言執行者の権限の明確化

4 遺留分制度に関する見直し

5 相続による特定財産の取得と登記の見直し

6 相続人以外の者の貢献を考慮する制度の新設

 今回は、このうち、配偶者居住権の保障について取り上げます。

 

配偶者居住権の保護

第1 現行制度と改正理由

 例えば、現行の制度では、夫の名義となっている自宅建物に夫婦で同居していた場合、夫が亡くなると、妻が自宅建物に当然に居住を続ける権利は認められていません。夫婦間で自宅建物の賃貸借契約や使用貸借契約を締結している場合は別ですが、そのような契約を夫婦間で締結することは稀ですので、残された配偶者の保護に欠けるとされていました。

 このため、判例は、使用貸借契約が成立していたものと推認されるとして残された配偶者の居住権の保護を図ってきました(最判平成8年12月17日)。

 しかし、この判例法理では、(ア)被相続人が反対の意思表示をしていた場合又はそのように解される場合(イ)遺言により、第三者へ居住建物が遺贈されていた場合は、使用貸借の推認が覆されて残された配偶者が保護されないという問題がありました。また、(ウ)生前、夫婦間で使用貸借契約が締結されていた(と推認される)場合も、相続発生後に、他の相続人が、相続財産の管理のために、使用貸借契約を解除して、妻に不動産の明け渡しを求めることは可能であるとする解釈もあります。(但し、この点は、妻には、2分の1の法定相続分があり、共有物の管理は、2分の1以上で決することから、使用貸借の解除は認められないとの反論も可能です。)

 そもそも夫が残された妻の居住権を保障しようとするのであれば、遺言により妻に居住建物の所有権を相続させるのが普通でしょう。但し、不動産以外の遺産がないか少ないときは、遺留分権利者である子が遺留分減殺請求権を行使することも考えられます。この場合、妻は、代償金を支払わないと自宅不動産を確保することができません。また、自宅は確保できても、金融資産の相続が認められないケースも出てきます(住むところ不動産は確保したが預貯金等を相続できないと生活費が足りないといったケース)。

 このようなケースを想定して、第三者から明け渡しを求められても最低限の期間(相続開始より6か月間)の猶予を認める制度(配偶者短期居住権)、居住を永続的に保障するとともに他の遺産も相続できる制度(配偶者居住権)が新設されました。

 

第2 配偶者短期居住権制度 (改正法 1037~1041条)

 

1 配偶者短期居住権取得の要件

 ①配偶者が、被相続人の財産に属する建物に

 ②相続開始時に

 ③無償で居住していること

 ④相続欠格事由(891条)廃除(892条、893条)がないこと

 

2 効果

 配偶者は、以下の期間は、当該居住建物に無償で居住する権利を取得する。

 ①遺産分割により居住建物の帰属が確定する日、または、相続開始の日から6か月を経過する日のいずれか遅い日までの間

 ②居住建物が遺贈された場合や、配偶者が相続を放棄した場合には、居住建物取得者が、消滅の申し入れをした日から6か月を経過するまでの間

 

3 実際の適用場面の考察

 前述のとおり、(ア)夫婦間の使用貸借契約が推認されない場合、(イ)遺言により、第三者へ居住建物が遺贈されていた場合、(ウ)遺言により配偶者以外の相続人に居住建物を遺贈する又は相続させるとされていた場合、(エ)所有権を夫婦間で使用貸借契約が締結されていた(と推認される)場合であっても、相続発生後に、他の相続人が、使用貸借契約を解除して、残された配偶者に不動産の明け渡しを求めてきたような場合などに、少なくとも6か月間は、配偶者の居住権を確保して身の振り方を決める期間の猶予を与えるというのが制度の主な存在理由であり実際の適用場面であると考えます。

 他の相続人に遺贈するないし相続させるとの遺言があるときでも、配偶者の居住権を保障すべく相続人間で新ためて協議をすることも可能です。

 ただ、残された配偶者と他の相続人間に対立があって、配偶者の居住権を保障する合意ができない場合には、同様に、この制度の存在理由があります。

 

 

弁護士活動コラム   2019年01月09日   admin

架空請求にご注意! 【弁護士 坂本 隆浩】

 「オレオレ詐欺」が話題となってからしばらくたちますが,いまだにその件数が減ることはありません。件数としては増えているといってもいいくらいです。バスの車内放送などで注意喚起されているように,今後も十分注意する必要があります。

 今回お知らせするのは,「オレオレ詐欺」ではなく「架空請求」というものです。

<メールでの架空請求>

 メール,SMSで「有料コンテンツ利用料」「アダルトサイト利用料」などの名目で利用料を請求されたことがある人は少なくないのではないでしょうか。スマホを利用して様々なサイトを閲覧ことができるようになったからこそ,「あれのことかな」などと「忖度」してしまうような名目を使って請求されることもあります。期限までに「連絡」しないと訴訟提起や身辺調査するなど不安がらせる言葉があるのが特徴です。

 対処法はただ一つ。無視することです。間違ってもこちらから電話しないことです。相手はメールアドレスを知っているだけで,住所を知っているわけではありません。不安になって電話をすると,そのメールアドレスが生きていることを知らせることになりますし,住所や勤務先を聞きだされることになります。こちらを不安にさせて様々な情報を聞き出すのは相手が一枚上です。そのため,無視することが最も効果的な対処法です。住所もわからなければ裁判を起こすこともできませんから。

<架空請求ハガキ>

 では,ハガキで請求されたらどうするか。

 ハガキの差出人として「法務省管理支局 民事訴訟通達センター」「国民訴訟通達センター」「地方裁判所管理局」など,さも公的機関からのハガキであるかのような体裁が取られます。差出人の住所として,実在する裁判所,法務局などの公的機関の住所が記載されることもあります。内容としては「訴訟が提起された」「連絡なければ給料等の差し押さえをする」「裁判取下げ最終期限までに連絡が必要」などと記載され,ご丁寧に本人からの連絡が必要とまで記載されています。保護シールのはられたハガキという手の込んだものもあります。

 こちらの住所・氏名も知っている,裁判所からのハガキで大変なことだと思わせる体裁が取られています。

 しかし,裁判所からハガキで訴訟を通知することはありません(裁判所のホームページにもそう書かれています)。住所・氏名もどこからか名簿が流失しただけですので,ハガキで来たからといって心配することはありません。不安になってハガキの連絡先と書かれたところに電話すると,その住所にあなたが住んでいるという情報を与えることになるだけです。架空請求メールと同様に無視するのが一番です。

<名簿流失解決名目の請求>

 架空請求を無視していても,「名簿が流失している,それを解決するためのお手伝いをします」というメールやハガキが来ることがあります。架空請求先に電話してしまった場合,電話でそのような知らせが来ることもあります。差出人としては,実在する弁護士の名前が使われることもあります。

 これも架空請求です。架空請求の仕上げといってもいいかもしれません。名簿流失問題・架空請求問題を解決するためと称して弁護士費用名目で金銭をだまし取ろうというものです。実在の弁護士の名前が使われていたとしても,連絡先の電話はその弁護士の使用するものではありません。

 架空請求側が複数の人物をかたって詐欺をはたらくのを劇場型詐欺といいます。弁護士から連絡がきたというのも,劇場型詐欺の一つです(弁護士だけでなく,警察官,駅員,銀行員など,詐欺の内容によって様々な役割の人を登場させることがあります)。劇場型詐欺の大きな特徴は,考える時間を与えずに金銭をだまし取ろうとすること,第三者に相談させないようにすることです。この特徴を忘れずに,勇気を振り絞ってわずかな時間でいいから第三者に相談することが必要です。

<無視してはならないのは>

 架空請求は無視するのが一番ですが,本当に裁判所からのもの,特に訴状であれば無視してはなりません。本当に裁判所からの手紙であるかどうかは,①封書で届いているか,②特別送達で届いているかが目安となります。

 ①裁判所からのものは封書で届くのが普通ですが,東京簡易裁判所からの支払督促は封書ではなく袋とじ状のもので届くこともありますので注意する必要があります。

 ②裁判所からのものは特別送達で届きます。袋とじ状の支払督促でもそうです。普通郵便で届くことはありません。書留より厳重なものですので,裁判所から書留めいたものが来たら裁判所からのものと思って間違いありません。

 他に,裁判所のホームページに書かれている電話番号と送られた書類の裁判所の電話番号が一致していれば裁判所からのものと判断できます。

 裁判所からの手紙であれば,訴状でも支払督促でも期限がありますので,早めに弁護士に相談することをお勧めします。

<最後に>

 架空請求は手を変え品を変えやってきます。こちらが考えてもいなかったような手段で請求されることも出てくるでしょう。支払ってしまった金銭を取り返すのは容易ではありません。くれぐれも心当たりのない請求には簡単に支払いしないことが必要です。

弁護士活動コラム   2018年12月11日   admin

読書日記1 【弁護士 中西 一裕】

 弁護士活動をしていると通勤時間だけでなく裁判所や弁護士会等への移動時間、裁判や接見の待ち時間など結構空き時間があり、読書に充てるとかなりの本が読める。

 以前は鞄に重い本を何冊も入れて持ち歩いていたが、最近は電子書籍をスマホやタブレットで読むことが多い。特に、明治大正の文豪の本は多くが「青空文庫」で無料で読むことができる。スマホの中に漱石全集や鴎外全集が入るというのは感動ものである。

 以下、最近読んだ本を何冊か挙げる。

 

○『国家の神話』(エルンスト・カッシーラー)

○『ホモ・ルーデンス』(ヨハン・ホイジンガ)

○『否定と肯定』(デボラ・E・リップシュタット)

 これら3冊の共通項はナチズムとの闘いである。『国家の神話』は学生時代に読んで感銘を受けた本であり、哲学・思想史の大家による渾身の同時代批判の書である。特に、第3部の「20世紀の神話」は現代の社会・思想状況にも通じる問題提起が含まれている。『ホモ・ルーデンス』は「遊びの相の下に」人類の文化と歴史に光を当てる斬新で示唆に富む名著であるが、最後まで読むとユーモアとフェアプレーの精神を失い「文化的小児病」と言うほかないナチズムの席巻が批判されていることがわかる。この2冊は1930年代~40年代のまさにナチズム勃興期に書かれている。

 他方、『否定と肯定』は副題が「ホロコーストの真実をめぐる闘い」で、映画化もされた最近の著作であるが、ホロコースト研究者の著者がホロコースト否定論の歴史家から名誉毀損裁判を提起された裁判実話である。アメリカとはまた異なるイギリスの裁判の実情が詳しく描かれて興味深いが、歴史修正主義との闘いが困難ではあるがいかに重要かがよくわかる著作といえる。

 

○『ザ・コールデスト・ウィンター 朝鮮戦争(上・下)』(デイビッド・ハルバースタム)

 これは朝鮮戦争をアメリカの視点から描いた作品で、著者はピューリッツァー賞を受賞したジャーナリストである。これを読むと朝鮮戦争はアメリカにとっては思い出したくもない「忘れられた戦争」であったことがよくわかる。朝鮮戦争は金日成の野心から起こされたが、ソ連も中国もアメリカとの衝突は避けたい意向が強く参戦には及び腰で、他方、アメリカもマッカーサーの楽観論とスタンドプレーに振り回されて苦戦を強いられた結果、38度線の停戦合意に至る。この間、北朝鮮の核問題でにわかに朝鮮半島危機が語られたが、過去の朝鮮戦争を振り返ってみることは有益であろう。

 

 今年2月に亡くなった石牟礼道子の著作もあらためて読んでみた。

○『苦海浄土』

○『椿の海の記』

○『西南役伝説』

 『苦海浄土』は言うまでもなく水俣病被害を現地から告発した名著であり、今なおその訴える力は色あせない。とりわけ、重度の障害を負った子どもやその家族の苦難を描きながらも、ユーモアを交え人間の尊厳を強く感じさせる描写が見事である。『椿の海の記』は水俣病問題が起きる前の豊穣の海に暮らす水俣の人々と生活を描いた珠玉の作品、『西南役伝説』は西南戦争を薩軍が通過する熊本地方の農民の観点から描いた異色作で、100歳を超える古老からの聞き取りの形式と方言の味わいが素晴らしい。

 

 このほか、ミステリーや推理ものとしては北欧やドイツのミステリー小説をよく読む。異色の主人公リスベット・サランデルが活躍する『ミレニアム 3部作』(スティーグ・ラーソン)や『刑事ヴァランダーシリーズ』(ヘニング・マンケル)など、面白いだけではなく社会問題に向き合う重厚な作品が多く、読み応えがある。

 

 ちなみに、最近は読みっぱなしではなく書評も書くよう心がけている。といっても、ブログを立ち上げるのは面倒なのでamazonのレビューである。ここで紹介した本もMt.Crowのペン・ネームでレビューを書いているので、興味がある方は読んでいただけると幸いである。

弁護士活動コラム   2018年10月22日   admin
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「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟 国と東京電力の責任を認め,被害救済を広げる勝訴判決!【弁護士 塚本 和也】

遅くなってしまいましたが,これまでコラムで紹介してきました,生業訴訟の福島地裁判決のご報告です。

 

第1 福島原発事故被害と原発政策の現状

 福島原発事故から7年が経った今でも,避難を余儀なくされている方が少なくとも4万人以上おり、これまで築き上げてきた住居、仕事、人間関係などの「ふるさと」を奪われたままでいます。また,福島周辺に滞在している方々も不安を感じながら日々生活しています。さらに,事故の収束のめどは立っていませんし,大量の放射性廃棄物の処理方法も決まっていません。

 しかし,国と東京電力は,法的責任を認めておらず,東京電力による無過失責任を前提とした賠償も不十分です。それにもかかわらず、避難指示解除と合わせた賠償や支援の打切り、森林除染の見送り,原発再稼働や輸出を進めようとしています。昨年12月の広島高裁の伊方原発運転差止決定は意義あるものですが,高浜原発と川内原発は運転差止が取消されたり認められなかったりしたことで再稼働されています。また,昨年12月には東京電力の原発としては初めて,柏崎刈羽原発が新規制基準に基づく安全審査に合格しました。さらに,今年7月,政府は全国の原発の再稼働を前提とするエネルギー基本計画を閣議決定しました。

 このような状況の中で,全国で1万2000人を超える被害者の方々が国と東京電力の責任を追及する民事訴訟を各地で起こしており,昨年から判決を迎え始めています。昨年3月の前橋地裁判決は国の責任を認めましたが,9月の千葉地裁判決は津波の予見可能性は認めたものの結果回避義務と可能性を否定し,国の責任を認めない不当判決でした。

 

第1 「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟

1 判決

(1)旗出し

 生業訴訟は,昨年10月10日,判決言渡し期日を迎えました。私は多くの原告団,弁護団や支援者の方々とともに判決前集会及びデモ行進を終え,裁判所の前で旗出しを待っていました。なお,奇しくも総選挙公示日のこの日,安倍首相は福島市で第一声を行いましたが,支持者だけを集めたもので,原発のことは一切語らず,当然私たちのところへは来ませんでした。14時すぎ,福島の弁護士3人が裁判所から出てきました。かたい表情だったため,少し不安になりました。しかし,大勢のマスコミに囲まれた台の上に立った3人はそれぞれ「勝訴」,「国と東電を断罪」,「被害救済広げる」という旗を広げました。その瞬間,「うおお!勝ったぞー!」など歓喜の叫びが上がりました。私も昨年の報告集において紹介した,楢葉町から葛飾区に避難されている原告のご夫婦と握手をして喜びました。

 

(2)国と東京電力の法的責任を認める

 判決は,「平成14年7月31日の『長期評価』に基づき,福島第一原発1~4号機敷地南側にO.P.+15.7mの津波が到来することを予見することが可能であり,(建屋等の水密化などを実施する)技術基準適合命令を発することが可能であったにもかかわらずこれを行わなかったものであり,この津波対策義務に関する規制権限の不行使は,本件の具体的事情の下において,許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠いていたと認められ」るとして,国の責任を認めました。特に,国が設置した機関が発表したにもかかわらず国がその信用性を争っていた,津波の予見可能性の基礎となる「長期評価」について,約36ページにわたって詳細に検討し,「研究会での議論を経て,専門的研究者の間で正当な見解であると是認された,『規制権限の行使を義務付ける程度に客観的かつ合理的根拠を有する知見』であり,その信頼性を疑うべき事情は存在しなかった」と論じました。

 判決は,東京電力についても過失を認め,「万が一にも原子力事故を引き起こすことのないよう,原子力発電所の安全性を最優先に考えなければならない原子力事業者に求められる高度の予見義務,回避義務を怠ったものとして,強い非難に値する。」と述べました。

 

(3)被害救済を広げる

 判決は,「人は,社会通念上受忍すべき限度を超えた放射性物質による居住地の汚染によって平穏な生活を妨げられない利益を有している」,「ここで故なく妨げられない平穏な生活には,生活の本拠において生まれ,育ち,職業を選択して生業を営み,家族,生活環境,地域コミュニティとの関わりにおいて人格を形成し,幸福を追求していくという,人の全人格的な生活(原告らのいう『日常の幸福追求による自己実現』)が広く含まれる」と,原告らの主張した権利利益を認定しました。また,科学的知見や社会心理学的知見といった「低線量被爆に関する知見等」や,水,食品,海,及び教育施設の汚染といった「社会的事実等」について,原告らの主張した事実を認定しました。その上で,国と東京電力が定めた指針等による賠償では不十分だとして,福島市,郡山市,いわき市などの自主的避難等対象地域などに住んでいた方の賠償額を上乗せし,賠償されていなかった白河市などの県南地域や茨城県の一部に住んでいた方の賠償も認めました。

 

(4)原状回復について

 原状回復請求については,「被告らに求める作為の内容が特定されていないものであって,不適法である」として却下されました。しかし,判決はこれだけで終わらず,「原告らの請求は,原告らの切実な思いに基づく請求であって,心情的には理解できる」という異例といえる文が加えられていました。裁判所に原告らの思いが響いていたことがわかります。もちろん私たちは控訴審で認められるべきだと訴えていきますが,除染技術の研究など,政治的な解決も必要となる分野であると思います。

 

(5)判決の評価と課題

 以上のとおり,勝訴判決と言える判決を得ることができました。国の責任を明確に認めたとともに,被害については原告らに共通する損害として認定されたものですので,被害者と認められた住民は150万人を超えます。今後の原発政策に影響を与える判決だといえます。

 一方,避難指示が出た地域に住んでいた方々への追加賠償はほぼ認められず,ふるさと喪失慰謝料も認められませんでした。また,上乗せされた金額も地域も不十分といえます。いわば各論といえる損害認定の部分で結局,放射線量が国や東電が主張した年間20ミリシーベルトではないものの,年間5ミリシーベルトを超えているかどうかという基準でほぼ線引きされてしまい,代表原告らが訴えた被害を共通の被害とみてもらえなかったことが原因かと思われます。また,国の賠償責任を東京電力の2分の1としています。これらの点については,控訴審で徹底的に主張立証を尽くし,さらに満足する判決を勝ち取りたいと思います。

 

第3 法廷外の取り組み

 法廷外の取り組みとして,昨年は公正な判決を求める署名集めに取り組みました。当事務所の連絡会のみなさまにもご協力いただいたおかげで,23万筆を超える署名が集まりました。国の責任を認めるというのは裁判官にとって勇気がいることなので,これも判決を後押ししたと思います。

 判決言渡し時には,福島地裁前だけでなく,東京電力本社前や沖縄でも旗出しを行い,支援者へのご報告と東京電力に対する訴えを行いました。判決後には,各政党や民主団体などに判決内容の報告と政策要求を行いました。

 今年2月には東京地裁,3月には京都地裁,東京地裁,福島地裁いわき支部で原発事故被害者の判決が出され,国を被告とする訴訟ではいずれも国の責任が認められ,中間指針等を超える賠償も認められました。私たちはこれらの判決後,全国の原告団,弁護団,支援者の方々とともに国や東京電力に脱原発とともに完全賠償をするよう交渉を続けています。

 また,私は今年4月に墨田の方々や司法修習生14名と福島浜通りのフィールドワーク,8月に墨田の方々15名と広島での原水爆禁止世界大会に参加し,原子力による犠牲を2度と繰り返さない決意を新たにしました。これらについてはまたコラムでご紹介します。

 さらに,東部地域においても,生業訴訟の意義を伝える学習会などを行いたいと思っています。仙台高裁での期日や福島地裁での第2陣期日の傍聴や福島の現地視察を行ってくれる方も募集しています。

 これらを通じて,原状回復や全体救済、脱原発を進めたいと思っています。今後ともあたたかいご支援をよろしくお願い申し上げます。

 

【参考】 HPはコチラ フェイスブックはコチラ

 

弁護士活動コラム   2018年08月20日   admin