介護保険制度の改正について 【弁護士 清水 千晶】

 2000年に始まった介護保険制度ですが、昨年8月から費用負担等の見直しがされました。今まで、要介護認定を受けた利用者は所得にかかわらず1割の利用料を支払えば介護サービスを受けられましたが、今後は、一定以上の所得のある利用者の自己負担は2割に引き上げられました。一人暮らしの利用者であれば年金収入だけで年間280万円以上、夫婦2人であれば年間346万円以上支給されていれば2割負担となるそうです。

 また、今までは、住民税非課税世帯は、特別養護老人ホーム入所時の食費・居住費代を補填する「補足給付」を受給できましたが、これからは1000万円を超える預貯金があれば補足給付は受けられなくなりました。補足給付を受けるには預貯金が1000万円以下であることを証明するために預金通帳を提出することになり、不正がわかれば補助の3倍を返還させられる制度も創設されました。老後に備えてこつこつ預金をしてきたAさんと、やれ時計だやれ宝石だ高級家具だと購入し今も所持しているBさん。2人が同じ額の少ない年金を貰っていた場合に「ありさん生活」をしてきたAさんの方は補足給付をうけられない・・・。

 今までは、利用者が世帯分離をした場合、世帯分離前の状況に関わらず、本人が非課税であれば補足給付の対象者とされていたのが、今後は世帯分離をしていても配偶者の所得を勘案して補足給付対象者か否かを判断されることにもなりました。

 つまり、特別養護老人ホーム入居した妻は、自宅に残る夫の年金が高ければ補足給付を受けられなくなるのです。保険料は別々に満額払っているですが、支給される時は個人単位ではなくなるのですね。

 2014年の介護保障費用支出10兆円、団塊の世代が後期高齢者になる頃にはこの2倍にふくれるという予想をきくと、致し方ないのかなと思う反面、年金情報流出騒ぎでかかった支出、新国立競技場のごたごたで既に無駄に出ている支出やらを考えたり、消費税も増税されたのにと考えたりするとなんかふに落ちない気もします。